研究課題/領域番号 |
12308005
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研究機関 | (財)元興寺文化財研究所 |
研究代表者 |
伊藤 健司 財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (00176330)
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研究分担者 |
渡辺 智恵美 財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (40175104)
植田 直見 財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (10193806)
村田 忠繁 財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (50210042)
雨森 久晃 財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (70250347)
塚本 敏夫 財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (30241269)
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キーワード | 保存処理後遺物 / 経年調査 / 保存処理方法 / 展示・保管環境 / 取扱い / 長期安定性 / 保存科学者 / 保存処理担当者 |
研究概要 |
本研究は4ヵ年継続事業の最終年度目あたり、初年度に実施した調査票や4ヵ年にわたり実施した現地調査で得られた情報や写真などのデータをまとめ、データベース化を計った。 現地調査で変化の生じている遺物の要因やサンプリングによる分析結果を概観すると、1、保存処理方法 木製品における遺物自体への彩色、低分子量を用いた処理におけるアルコールなどの析出、金属製品における防錆不良による新たな錆や亀裂など 2、展示・保管環境 展示クロスやスチロールと遺物の癒着、パック内においての調湿剤や脱酸素剤の機能低下、高湿度下の保管による薬剤等のしみだしなど 3、取扱い 過重梱包により開梱時の折損及び破損、収納した箱などを積み上げることにより通気性がなく高湿度に伴う変色、移動時等の折損・破損など 4、その他 保存処理後遺物に水滴によるシミ、ラベル紐の結び目の痕跡、補填樹脂の膨潤や剥離、接着・復元のズレ、遺物本体への彩色など などが顕著であった。 新たな処理法での長期安定性は、短期間で処理が可能であり現状では遺物自体の安定性は認められよう。ただ遺物によっては変形、収縮などが生じてほか、表面に析出する薬剤などまだ解決すべき問題はある。また未開梱のままで数年放置して開梱するとクラックや錆が生じていたり、折損や破損していたりした例があり、今後改善の余地はある。 総数約9,000点を調査し、2,000点程度に問題があることを確認した。原因としては保存処理上の問題よりも展示・保管環境や取扱いに起因することが多く、この点については保存科学研究者や保存処理担当者から周知徹底することにより解消できることが明らかとなった。
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