研究概要 |
研究の2年目にあたる本年度は,昨年度より構築している(1)「車内音声対話コーパス」,(2)「話し言葉同時通訳コーパス」をより充実し,これらに対する詳細な調査を行った.また,対話データから得られた知見に基づき事例に基づく対話システムの構築を進めている.以下に概要について述べる. ○車内音声対話におけるユーザインタフェースに関する研究: 昨年度に引き続き,実環境における音声対話の評価を行うために,実走行車内において音声インタフェースを利用する様子を収録した.現時点で800名,600時間に上る音声・画像等のマルチメディアデータベースが構築されている.本データベースは,マルチモーダルインタフェースの形式的仕様記述に重要な役割を果たすことが期待される.また,収録された音声対話から大規模な書き起しコーパスを構築し,話し言葉における言語現象の観点から様々な分析を行った. ○事例に基づく音声対話手法: 大量の対話コーパスを直接用いることによって,事例に基づく対話システムの構築が期待できる.本手法は,ユーザの発話に最も近い事例を対話コーパス中から抜き出し,それに対する応答もコーパスを用いて生成する.人が実際に行った対話を手本として行われる対話は,ルールによって行われる従来の対話に比べ,より柔軟で自然になることが期待される.また,各発話に対し意図タグを付与することによって意図推定を行い,事例と意図を用いた対話制御手法を提案した. ○話し言葉同時通訳における対話調査: 昨年度より構築している同時通訳コーパスを拡充し,講演音声や旅行対話に対する日英・英日の同時通訳を収録した.同時通訳対話は高度なインタラクティブ性を必要とする対話であり,現時点で130時間を越える同時通訳データは,インタフェースの高度化への知見を得ることがが期待される.また,日英の対訳を自動的に求めるためのアライメント手法を開発した.
|