研究概要 |
本年度は、以下の分析を行ない、以下のような成果を得た。 1)秋田沖約100kmのKT94-15-PC5コアについて、砕屑物粒度分布を分析した。そして、粒度分布を複数の正規分布に分離する事により、大陸からの風成塵の粒度分布と日本列島から供給された砕屑物の粒度分布を分離し、其々の粒度および含有量を評価した。この結果は、主要元素組成を因子分析に基づく大陸起源風成塵含有量の推定結果と概ね一致し、特に最終間氷期(約13万年前〜7万年前)において、大陸起源風成塵粒度および含有量が数千年スケールで大きく変動する。これに対して、後氷期部分の大陸起源封成塵含有量および粒度は余り変動しない。この事は、最終間氷期においてアジア・モンスーンが大きく変動した可能性を示す。 2)太平洋側における高時間解像度環境変動解析に適したコア試料を探す目的で、予察的に、三陸沖ODP1151地点の過去20万年をカバーする76試料について、アルケノン、主要元素組成、鉱物組成、有機炭素含有量、炭酸塩炭素含有量、全窒素含有量の分析を行った。その結果、大陸起源風成塵の砕屑物への寄与は認められたが、その変動は予想されるパターンと異なり、アルケノン温度も氷期-間氷期に伴った変動を示さない事、風成塵寄与率と炭酸塩炭素および有機炭素含有量の間に正相関が見られる事が明らかになった。検討の結果、このコアは再堆積の影響が強いと判断された。 3)堆積物コア主要元素組成の非破壊、高解像度、迅速分析を行う目的で購入したX線分析顕微鏡の定量性評価を行った。その結果、5x5mmの領域を、Al,Caについては相対誤差10%程度で、Si,P,K,Fe,Ti Mnについては相対誤差5%以下での定量が可能である事、含水率、堆積物の表面状態、粒度が定量性に大きく影響する事、が明らかになった。
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