研究課題/領域番号 |
12308026
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
多田 隆治 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (30143366)
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研究分担者 |
荻原 成騎 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (50214044)
坂本 竜彦 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90271709)
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キーワード | 風成塵 / アジア・モンスーン / 最終間氷期 / アルケノン / X線分析顕微鏡 |
研究概要 |
本年度は、6月に隠岐堆と秋田沖で全長53m、38mの堆積物コアが採取され、本研究の一環として、コアの記載、分割、試料採取が7、8月に延べ8日行なわれた。こうして分割された試料の内、本年度は、隠岐堆より得られたコアの上部15m(過去15万年分)について、1.25〜2.5cm間隔で、色、主要元素組成、砕屑物粒度、酸素同位体比、有機炭素、アルケノンの分析を行なった。その結果、以下の事が明らかになった。 1)最終氷期に、ダンスガードオシュガーサイクル(DOC)に対応する変動が、特に色、有機炭素含有量、Ca含有量に明瞭に認められ、それらは暗色層(亜間氷期)で高い傾向にあった。これは、日本海表層での生物生産性が亜間氷期に高まった事を示唆している。最終間氷期後半にも同様の変動が見られたが、前半には変動は顕著ではなかった。 2)砕屑物粒度にもDOCに対応した変動が認められ、亜間氷期に粒度が減少する傾向が顕著だった。最終間氷期前半には、むしろ後氷期より粗くなると共に振幅の大きな変動が認められた。砕屑物粒度は日本海に飛来する黄砂の粒度を反映すると考えられ、亜間氷期に冬季モンスーン強度が減衰した可能性が高い。一方、最終間氷期の変動は、偏西風帯の北上に伴う変化を見ている可能性がある。 3)最終氷期のアルケノン古水温は、DOCに対応した変動は余り顕著でなかった。最終間氷期のアルケノン古水温は後氷期より0〜3℃高い水温を示し、最終間氷期が現在より温暖であった事を示唆したが、数百年〜数千年スケールの急激な水温変化は認められなかった。 4)浮遊性有孔虫の酸素同位体比は、最終氷期極相期に軽くなる傾向が見られた。最終間氷期後半から最終氷期前半にかけては、酸素同位体比は比較的重い値で、最終間氷期前半のみ後氷期とほぽ同じ軽い値を示した。こうした傾向は、太平洋などのopen oceanで見られる傾向と大きく異なる。
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