研究概要 |
本研究は、熱帯雨林における樹木の内部において半径方向における水分分布の測定、微量元素分布の測定ならびに微量放射能の測定から樹木の年齢を推定し、樹木の育成している土地の炭素固定能を算出することを目的に実験を開始している。本年度は主に、微量元素の測定と微量放射能の測定をターゲットに実験を進めた。分析には、日本原子力研究所研究炉、JRR-3Mを用いた。樹木の小口材を半径に沿ってサンプリングし、約100mgの試料を用いると、Na,Mg,Al,Cl,K,Caが、短時間(5秒間)照射の放射化分析により、また、Fe,Znなどの遷移元素が長時間(20分)照射の放射化分析で定量できることが判った。そこで、小口材を半径方向に約0.5mmの厚さで削りだし、分析準備を進めている。微量放射能測定については、まず、日本のスギの小口材を用い、心材部と辺材部でどのような種類の環境放射能が検出されるかを確かめた。その結果、数日間の長期測定で、^<137>Csならびに^<40>Kが最もよく測定できることがわかった。着目していた^<210>Pbは、γ線のエネルギーが低いこともあり、当初、機器が設置されるまで借りていた半導体検出器では測定できないことがわかり、急遽、購入予定機器の仕様を見直し、超低レベルバックグラウンド用に変更した。その後、^<210>Pbを検出するためには、少なくとも試料が100g以上必要なことが判ったので、測定時の容積を小さくするため、試料を灰化して測定を行った。灰化試料約50〜100mgを用いてGe検出器で約1週間測定すると、2〜3%の誤差で約1cpm/g(灰)=約0.003〜0.004cpm/g(fresh wt.)のカウントが得られることが判った。そこで、予備実験として、年輪が存在しているメタセコイアの小口材を2年ごとに切り出して灰化し、10年づつ纏めて測定を開始している。
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