研究概要 |
今年度は以下の成果を得た. 1)小Maf群因子3重欠損マウスの作製:MafG,MafK,MafF全ての小Maf群因子を欠損するマウスを作製したところ,同マウスは胎生10.5日で致死であることが明らかになった.胎盤の形成異常が認められ,胎児の死因は,胎盤の機能不全であると考えられた. 2)bZipネットワークの構成因子の量的・質的変動と相互作用の解析:MafG欠損マウスでは,巨核球からの血小板放出過程であるproplatelet formation (PPF)に障害が認められる.一方,小Maf群因子を巨核球特異的に過剰発現するマウスを作製したところ,やはり,PPFが障害された.この両者を交配すると,小Maf群因子の量は野生型とほぼ同じレベルに復帰し,PPFの障害も回復した.これにより,MAREを介する転写の活性化は小Maf群因子の存在量の増減により変化することが個体レベルで示された. 3)bZIpネットワークの標的遺伝子の探索:mafG-/-:: mafK+/-マウスの巨核球のmRNAと野生型マウスのmRNAとでサブトラクションを試みた結果,アクチン,チュブリンなどの細胞骨格系の遺伝子発現が,変異マウス由来の巨核球において減少していることが明らかになった. 4)bZipネットワークを動かすシグナルの解析:mafG-/-:: mafK+/-マウスの神経細胞において,ユビキチンが蓄積していることが明らかになった.これにより,mafG-/-:: mafK+/-マウスの神経症状の発症原因は,神経細胞における異常蛋白質の蓄積である可能性が考えられた.bZipネットワークの機能を制御する刺激として,神経細胞の活動に伴う酸化ストレスが関与している可能性について,現在検討中である.
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