研究概要 |
1.静脈壁の力学的特性と血圧上昇が及ぼす影響 家兎大静脈,頸静脈,大腿静脈壁の力学的特性を詳細に調べたところ,部位によって力学的特性と平滑筋細胞の収縮能が大きく異なることがわかった。また,家兎大腿静脈の血圧を上昇させて飼育し,静脈壁の反応を調べたところ,壁の円周方向応力と力学的特性が正常レベルに維持されること,血圧上昇が平滑筋細胞の活性化を引き起こすことなどがわかった。 2.腱・靭帯治癒組織の回復に及ぼす負荷の影響 家兎膝蓋腱中央部に作成した欠損部に形成される治癒再生組織の力学的特性は,期間の経過とともに向上するが,治癒の途中で過負荷状態にすると治癒再生組織と残存膝蓋腱組織の強度が一時的に大きく低下することがわかった。 3.負荷変化が骨の強度と形態に及ぼす影響 ラットの左下肢を胴体に固定して大腿骨に作用する負荷を減少させて飼育した後に,通常状態に戻して15週間後までの大腿骨骨幹部の力学的特性と大体骨頸部の形態の変化を調べたところ,骨幹部の破断荷重は固定開始後に低下し,固定解除後も小さいままであること,骨幹部の硬さおよび大腿骨頸部の皮質骨面と海綿骨面積は固定開始後に小さくなり,固定解除後も小さいまま推移するが,最終的には正常レベルに近づくことがわかった。 4.膝蓋腱の除荷がコラーゲン線維の力学的特性に及ぼす影響 除荷操作を施した家免膝蓋腱から直径1μm以下のコラーゲン線維を摘出して引張試験を行ったところ,線維の引張強度と破断ひずみは除荷操作後徐々に低下するが,3週後に回復することがわかった。 5繰り返しひずみの大きさがマクロファージの泡沫化に及ぼす影響 5%と10%の振幅の繰り返しひずみを作用させながらマクロファージを培養して,ひずみの大きさが泡沫化に及ぼす影響を調べたところ,いずれもマクロファージの泡沫化を促進させるが,5%と10%の振幅の違いは泡沫化の程度に影響を及ぼさないことがわかった。
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