研究概要 |
ショウジョウバエのrunt遺伝子の哺乳類ホモログは、Runx1、Runx2、Runx3の3種が存在する。このうちRunx3/Pebp2αCの機能は従来殆んど未解明であったので、Runx3のノックアウトマウスを作製しその表現型の解析を行った。 1,Runx3の発現は、消化管上皮細胞で観察された。Runx3-/-マウスの胃上皮細胞層は、増殖能が亢進しアポトーシスが起こらないために、過形成をおこした。Runx3-/-マウスから単離した胃上皮細胞にTGF-βを作用させた実験から、この現象は、Runx3-/-の胃上皮細胞の、TGF-β感受性の喪失に起因するということが判明した。 2,RUNX3はIgCαプロモーターを活性化し、IgMからIgAへクラススィッチを誘導する。従ってRunx3-/-マウスではクラススィッチが起こらない可能性が考えられたが、実際にはRunx3-/-マウスでもクラススィッチが観察された。他のRUNXファミリーが代償している可能性が考えられた。 3,T細胞の分化に於いてCD4+CD8+ダブルポジティブT細胞からCD4+及びCD8+シングルポジティブ細胞が形成される。Runx3-/-マウスではCD4+シングルポジティブは形成されるがCD8+は形成されない。CD8+の形成にあたりCD4サイレンサーが機能することが知られている。従ってRunx3がCD4サイレンサー活性に重要な機能を持つことが予測された。 4,ICRマウスのRunx3を破壊すると、重篤な神経症状が観察された。TrkCを発現する後根神経節細胞からの神経線維は、脊髄内で前角の運動神経核にシナプスを作りstretch reflex circuitを形成するが、Runx3-/-ではこの回路が形成されないことが判明した。よって、Runx3はTrkCを発現する後根神経節細胞からの神経線維のpathfindingに必須なものと思われた。
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