研究課題
本研究は、大きく(1)分担者全員が担当する研究、(2)分担者がグループに分かれて行なう研究、(3)分担者個人の研究の三つのレベルに分かれている。(1)のレベルでは、昨年度に引き続いて「薩摩藩および島津氏に関する研究文献目録」(仮題)の作成を、大学院生の応援を得て推し進めた。本年度は昨年度コンピュータに入力された文献のデータを校正するとともに、新たな文献を探して入力をする段階まで終えることができた。来年度には分類作業を行ない目録を完成させる予定である。(2)のレベルでは、文書研究班、書籍研究班、文物研究班に分かれ、鹿児島大学玉里文庫の書誌調査や、東京大学史料編纂所所蔵の文書調査、鹿児島県内各地に残されている資料の調査を精力的に行った。島津家25代島津重豪が果たした文化的な役割を再検討するために、安永・天明〜天保にかけて大名の趣味・学問および文化事業について考察し、その成果を図録として発表した。その中で、沖縄県立図書館所蔵の『本草質問』が、『質問本草』の作成の過程、すなわち薩摩藩が琉球を通じて清の学者に問い合わせを行った過程を示す貴重な資料であることを明らかにできたことは、本年度最大の成果のひとつである。また、今年度は本科研費で「薩摩国地理志」を購入した。これは明治期の写本のみが知られていたものだが、今回購入した写本は編纂過程が細部に至るまでよくわかる貴重なもので、現在明治の写本との比較検討を行なっているところである。他に、幕末の薩摩の文化状況を示す好資料である木脇啓四郎の留書の翻刻と注釈作業、加治木島津家の家宰であった新納仲左衛門家文書の整理作業も順調に進んでいる。(3)の個人のレベルでは、分担者がそれぞれのテーマに従って、資料収集と調査検討を行った。その成果の一部は本年度中に発表したが、来年度の報告書作成にむけて十分に準備が整ったといえる。
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