研究課題
基盤研究(A)
本研究は、日本史学、国文学、中国学、美術史学、地理学、博物学を通して、薩摩の大名文化を総体的に把握することを目的として研究を行なった。研究は、大きく(1)分担者全員が担当する研究、(2)分担者がグループに分かれて行なう研究、(3)分担者個人の研究の三つのレベルに分かれている。(1)のレベルでは、大名文化研究の進展に寄与することを目的として、「薩摩の大名文化に関する研究文献目録稿」の作成した。鹿児島大学南方資料研究センターの年報の文献目録から関連するデータを抽出するとともに、新たな文献を探して入力を行ない、これらを内容に従って分類した。まだ未定稿の状態ながら成果報告書に収録した。(2)のレベルでは、文書研究班、書籍研究班、文物研究班に分かれ、鹿児島大学玉里文庫の書誌調査や、東京大学史料編纂所所蔵の文書調査、鹿児島県内各地に残されている資料の調査を精力的に行なった。本科研費で購入した加治木新納伸左衛門家文書の整理作業を終え、その目録稿を作成した。また、同文書中の伊藤瓊山の文集『瓊山文集』の翻刻、幕末〜明治の薩摩の文化状況を示す好資料である木脇啓四郎の『萬留』の翻刻と注釈作業、沖縄名護市博物館蔵の「琉球蔦真景」の研究、薩摩藩の名所図会編纂過程の研究を行ない、それぞれ成果報告書に成果を発表した。(3)の個人のレベルでは、分担者がそれぞれのテーマに従って、資料収集と調査検討を行った。成果報告書には、(2)の成果も含め、計14本の論考を収めた。そのうち、中世以来関係が続いてきた近衛家と島津氏の交流の実態を、近衛家に存する日記をもとに浮かび上がらせた研究や、薩摩藩の記録所の総体的な把握を目指した研究は、今後の関連分野の研究を刺激する基礎的かつ重要な研究である。
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