研究課題
本研究では、電波干渉計で用いるための局部発振器の開発を行っている。従来は、ガン発振器(80GHz程度)を源発振とし、それの逓倍波を電波望遠鏡の局部発振信号として、使用してきた。しかし、この方式では受信機内部に多くの機器を入れる必要がある、比帯域幅が取れない、等の欠点がある。次期干渉計計画LMSAの観測周波数は、30〜950GHzであり、この周波数域を10の受信機で観測する。従って、局部発振器には、コンパクトかつ広比帯域である事が要求される。我々のグループでは、局部発振信号を2台のレーザーの差周波に載せ、アンテナへ供給する方法(フォトニックローカル)を提案している。今年度における研究の成果を挙げる。(1)100GHzフォトニックローカルを作成し、出力2.2mWを得た。これは同一方式による世界最高出力である。またその出力は75GHz〜110GHzにおいて出力変動幅3dB以内であった。(2)超伝導受信機を使用し、ガンダイオードとフォトニックローカル発生信号の比較を行った。この比較のおいて雑音温度27Kでガンダイオード、フォトニックローカル両者に性能差は確認されなかった。(3)フォトニックローカルは80Kに冷却して使用される。従って、作成したフォトニックローカルの冷却を行った。一ヒートサイクルにおいてその性能劣化は認められなかった。今後、冷却時の100GHz信号発生を試みる。(4)米国天文台(NRAO)において、ラザフォードアップルトン研究所が作成したフォトニックローカルとの性能比較を超伝導受信幾を用いて行った。受信機雑音温度約200Kの範囲で両者のフォトニックローカルに性能差は確認されなかった。NRAOにおける実験で、レーザーの持つ雑音が大きくフォトニックローカル性能に影響する事を確認した。(5)現在、電気通信大学、NTT未来ネット研究所でレーザーフェーズロックを推進中である。(6)UTC-PDの周波数応答を知るためにログペリアンテナにUTC-PDを装荷し出力性能を評価した。1THz近傍までフォトダイオードが応答している事を確認した。(7)100GHzフォトニックローカルの試験結果を踏まえ、350GHzフォトニックローカルの設計試作を行っており、完成次第性能評価を行う。
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