本年度は、低速電子回折装置、反射高速電子回折用電子銃、超高真空試料マニピュレータ、超高真空槽、超高真空ポンプ等を購入し、本研究で実用化を目指す振動相関熱散漫散乱測定システムの組み立てと性能試験を行った。特に低速電子回折装置は、本研究の中心的な装置であるので性能を十分吟味したうえで機種の選定を行った。組み立て後の性能試験として第一に真空試験を行った。適切な排気手順により5x10^<-11> Torrという表面分析装置として十分な超高真空を達成した。次に低速電子回折装置の性能試験を行ったが、電子ビームのサイズは十分小さく、単色性も十分であった。低速電子回折装置の分光器のエネルギー分解能も、弾性散乱電子を選択するのに十分であった。ただし、電子線と分光器のエネルギーを独立に外部からコントロールできる様に、購入した装置のコントローラーの改造を行った。低速電子回折装置のスクリーンに写し出される熱散漫散乱像の観測は、既存の冷却CCDカメラで行うことになるが、スクリーンの明度が高いため感度の高い計測が可能であった。また、本研究では測定の高度な自動化が目的でもあるので、試料の回転はコンピューター制御によるモータドライブシステムを採用した。具体的には、試料マニピュレータの極角、方位角回転をステッピングモーターで制御した。以上のように装置の組み立ては完了し、装置が本研究目的に十分な性能を持っていることを確認した。
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