本研究の目的は、市販ベースの低速電子解析装置を用いて表面構造を簡単に解析できる振動相関熱散漫散乱法を実現し、その普及をはかることである。本年度は、はじめに昨年度に組上げて性能試験を行なった低速電子解析装置を使用して、実際に振動相関熱散漫散乱をを測定して表面構造解析を行った試料表面としては、最近になってようやく構造が明らかになったSi(111)4x1-In表面を使用した。測定装置が、振動相関熱散漫散乱測定のために十分な性能を持っていることは昨年に確認済みであるため、まず振動相関熱散漫散乱を自動計測するための計測ソフトウェアの作成を行った。また、測定した複数の2次元解析パターンから3次元的な逆格子空間像を構築するソフトウェアも合わせて作成した。これらのソフトウェアにより、一度の測定によりスクリーン上に現れた全ての回折スポット、強度をデータとして取り込むことが可能になった。このソフトウェア、ハードウェアを合わせた測定システムにより、これまでの10倍から100倍の効率で回折パターンを測定することが可能になった。Si(111)4x1-In表面で得られた回折パターンを逆フーリエ変換することによって得られたパターソン関数には、Si(111)4x1-In構造に対応するピークが正確な位置に現れた。したがって、当初の第一の目的である手法の実現は、達成できたと考えている。今後、手法の普及をはかるために作成したソフトウェアの配布等を行う予定である。
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