研究概要 |
本研究計画は,金属錯体等分子性化合物の高圧力下単結晶X線回折測定に適した「2次元検出器型高圧専用単結晶X線回折装置を試作」することを目的としている. 近年,物質開発において,高圧力を用いた物性研究が増加している.金属錯体の物質研究においても,高圧力は,金属原子と配位原子間の配位結合の距離を短縮し,配位子場を変化させ配位多面体・金属錯体分子の電子構造を大きく変化させる等,大きな摂動場として作用することが期待される.そしてその物性の解釈には,高圧力下での結晶構造が不可欠である.しかし現状は,金属錯体のような複雑な分子構造とパッキングを持つ物質では,粉末回折から結晶構造を得ることが困難であることもあり,高圧力下での結晶構造の解明はわずかである.このような背景のもと,金属錯体を念頭に置いて高圧力下での単結晶X線構造解析装置の試作計画を立案した. 本年度は,昨年度までで実施した,購入した市販の単結晶X線回折装置の高圧用へのハード・ソフト面での改造,試作機製作,ならびに,高圧測定に必要な周辺機器・器具の整備のもと,高圧用の測定手法,測定戦略を,様々な条件での測定を積み重ねて検討した.これは細かなことの積み重ねであるが,市販ソフトのルーチン測定手法が用をなさなかったので,重要な知見を集められたと判断している.本年度においては,他に以下のことも実施した. ・回折計のゴニオメーターヘッド部へのダイヤモンド・アンビル・セルの取り付け治具をさらに強固なものに改造した.(小さな不具合をできるだけ,なくす努力をした.) ・データのSN比向上のため,ダイヤモンドとベリリウムディスクからのバックグラウンド低減させるべく,低頭式のダイヤモンドアンビルとそれ用のステンレス台座を設計製作した. (3)湾曲イメージングプレート検出式X線回折装置についての金属錯体の結晶構造解析評価を兼ねて,高圧下で興味のある構造・物性変化を規定できる金属錯体・包接体について合成,単結晶化を行い,大気圧下での回折データ測定,構造解析を行った.
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