研究概要 |
(1)低抵抗薄膜金属ガラスの探索 将来のマイクロプローブへの応用展開を視野に入れ,新たに低抵抗な薄膜金属ガラスを創成するために,申請設備である高周波スパッタ装置(アネルバ(株)・L-250S)導入して,抵抗率の低い薄膜金属ガラスとなる合金組成を探索した. 検討の結果,Pd_<76>Cu_6Si_<18>(原子%)の薄膜金属ガラスの成膜に成功し,四端子法による抵抗率測定の結果,62μΩ・cmを実現した.薄膜金属ガラスの抵抗率は,成膜条件に大きく依存し,成膜時の水蒸気および酸素分圧の低減が低抵抗化に効果がある.このため従来の焼結ターゲットからアーク溶解した合金をターゲットとし,成膜した薄膜の抵抗率の安定化を図った. (2)低抵抗薄膜金属ガラスの微細加工法 上記(1)で見出した低抵抗薄膜金属ガラスに対して,従来のMEMSプロセスの適用を検討した.Pd基薄膜金属ガラスは,高耐食性でありエッチング加工が困難であったため,リフトオフ法を適用することで,幅20〜100μm,長さ50〜500μm,厚さ0.9〜10μmの各種寸法を持った微細片持はりの製作に成功した. さらに,金属ガラスの特徴である過冷却液体域での軟化を利用して,従来の金属材料,シリコン系材料のアニールに比べ,薄膜金属ガラスは低温,短時間でのアニールによって内部応力が緩和できることを示した.また,微細冶具を用いて薄膜金属で製作した微細構造体を弾性変形させた後にアニールし,応力を緩和することで変形させる微細成型法についても検討を行った. (3)薄膜金属ガラスの物性 薄膜金属ガラスの物性値(過冷却液体域,熱的安定性,縦弾性係数,引張強度,弾性限界,抵抗率,密度)を測定した.測定の結果,Zr基およびPd基薄膜金属ガラスは,高い弾性限界と引張強度を有し,ばね材として優れていることが明らかとなった.
|