研究概要 |
火炎の燃焼状態を詳細に知るためには,温度や化学種の濃度といった物理量の時間変動および空間的な瞬時分布を調べることが重要である.その中で火炎中のOH^*,CH^*,C2^*自発光は,測定が容易で時間連続的な計測が可能なため,燃焼反応の強度や進行段階を示す指標として古くから用いられてきた. 各ラジカル自発光強度比と当量比には強い相関があることが報告されているが,ラジカル自発光強度は当量比の他に,温度と圧力の影響を強く受けることが知られており,それらとの同時時系列計測が不可欠となる.しかしながら,自発光と温度,圧力の局所情報を時系列で同時計測した例は見あたらない.そこで,高空間分解能を有するカセグレン光学系と波長分離器を用いて,定圧下における火炎中の局所からのラジカル自発光強度計測と,非接触温度計測法であるレーリ散乱法による温度計測を併用し,当量比と火炎温度を変化させた場合のラジカル自発光強度と局所火炎温度との関係を調べた. 火炎発光スペクトルの基礎的特性の把握と火炎構造解析への応用性の確認を行った.まず,層流予混合火炎(メタン空気,プロパン空気)の局所的な反応帯において自発光を時空間分解計測し,詳細なラジカル発光スペクトルの基本特性を調べた.そして,火炎帯内の局所発光スペクトルは,燃焼ガス領域とは異なり非常に明確なOH^*,CH^*,C2^*バンドが観測されるため,火炎構造の解析に応用できることを確認できた.次に,この局所自発光スペクトルの回転・振動バンドについて詳細な当量比依存性を調べた.そして,自発光強度比OH^*/CH^*およびC2^*/CH^*が当量比と高い相関を持つことを明らかにした. 火炎発光を用いた温度解析ソフトウェア開発のために,炭化水素燃料火炎帯中C2^*ラジカル自発光のスワンバンドの発光強度比とC2^*ラジカル振動温度の関係の理論解析,および,火炎中局所の熱力学的温度とC2^*ラジカルスワンバンドの強度比の相関の実験的検証を行った.まず,量子力学理論によってC2^*ラジカルの遷移確率を求めることによりC2^*ラジカル自発光過程の理論解析を行い,C2^*ラジカル強度比とC2^*ラジカル振動温度の関係を予測した.次にC2^*ラジカル強度比と局所熱力学的温度の関係のデータを得るために,バーナ管径,流速,供給酸素濃度,酸素温度,燃料(プロパン,メタン)を変化させた場合を調べた.この結果,層流火炎の場合には,理論解析で予測された温度と強度比の相関がみられた.
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