研究概要 |
1)レーザ溶射プロセスは、1.4kW炭酸ガスレーザ熱源とYAGレーザ熱源、ストランドワイヤー送給装置、溶射ガス送給部、真空チャンバー、および減圧排気装置で構成し、3種の組み合わせのFe-Alストランドワイヤーを用いたFe-Al系金属間化合物皮膜を作製した。レーザ溶射時の飛行粒子、積層粒子の緻密化、高純度化及び皮膜組成等を調べた。それらの皮膜組成は、Fe(4)Al(3)及びFe(3)Al(4)がFeAlであるが、Fe(5)Al(2)がFeAl以外ζ-FeAl_2、η-Fe_2Al_5、θ-FeAl_3が多く混在していた。これらの皮膜のうち、Fe(4)Al(3)の皮膜は約1%の低気孔率で、最も良好であった。そこで、Fe(3)Al(3)Ti(1)ストランドワイヤーを作製し、無欠陥、高硬度の金属間化合物を材料設計した。 2)ストランドワイヤーは、Ti, Ni, Al, Feの細線を7本縒り線あるいは19本縒り線として作製した。金属間化合物皮膜の組成は、複合する縒り線金属組成;X_A、金属密度;ρ_A、縒り線径;R_A、縒り線の本数;N_Aとし(Aは縒り線の金属種;A, B, C・・・)、複合化配合プログラミングを導き出した。また、複合化配合プログラミングは、目標とする金属間化合物皮膜の組成となることを確認し、テーラード材料作製の指針とした。たとえば、228μm径Al細線3本及び279μm径Ni細線4本のストランドワイヤーを用いると、Ni_3Al金属間化合物皮膜を作製した。このように、ストランドワイヤーを用いたレーザ溶射は等量及び非等量金属間化合物皮膜のテーラード・マテリアル設計が可能となった。 3)Ti-Ni系では、溶射のみでは皮膜に約6%の気孔を含むが、ホットプレス及び熱処理により、緻密で無欠陥となり、均質なTiNi金属間化合物皮膜を作製した。Ni-Al系、Ti-Al系、Fe-Al系及びFe-Al-Ti系等においても、それぞれの金属間化合物皮膜は、緻密で、均質な皮膜であり、耐磨耗性及びトライボ特性が良好であった。ただ、それぞれの皮膜の硬さ、耐磨耗性が異なるため、実機への適用は、適切な選択が必要である。
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