研究概要 |
(1)2及び3元系金属間化合物皮膜の目標組成(テーラード組成)は、複合する縒り線金属組成;X_A、金属密度;ρ_A、縒り線径;D_A、縒り線の本数;N_A、金属の原子量;A_Aとし(Aは縒り線の金属種:A, B, C・・・)、とするテーラード組成調整式を導き出、ストランドワイヤを設計した。例えば、Ni_3Al金属間化合物は、Ni-Al状態図では、約75atm%位置の狭い領域に存在するが、テーラード組成調整式から、228μm径Al細線3本及び279μm径Ni細線4本とする異種金属縒り線の配合設計により求められ、レーザ溶射法により作製した皮膜組成は、Ni_3Al金属間化合物皮膜であった。このように、目標の等量及び非等量金属間化合物皮膜は、テーラード組成調整式により、ストランドワイヤの設計、及び目標とするテーラード組成であった。 (2)金属間化合物皮膜のトライボ特性としての耐摩耗性は、Ti-Ni、Ni-AlおよびNi-Al系では、Ti-Ni系が最も良好であり、3元系では、Fe-Al-Ti系及びNi-Al-Ti系においても、前者がHV350からHV560に、後者がHV600からHV750にいずれもTiを添加することによりHV200〜HV150程度に上昇し、トライボ特性の改善が見られた。 (3)摩耗機構は、グラインディング摩耗であるが、金属間化合物は、温度上昇が伴っても、単なる研削摩耗で、良好であり、例えば、Al材は、温度上昇に伴い、掘り起こし現象(ploughting)が生じ、耐摩耗性が劣っていた。 (4)最適組み合わせの異種金属縒り線を用いた金属間化合物皮膜は、実機機械摺動部品に有効であり、セラミック皮膜よりも、割れ等が生じず、良好であった。
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