研究課題/領域番号 |
12355032
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
谷 一英 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60029444)
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研究分担者 |
山縣 恒明 大阪大学, 基礎工学研究科, 助手 (70166594)
片岡 靖隆 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教授 (90221879)
真島 和志 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教授 (70159143)
作用 昇 高砂香料(株), 総合研究所, 主任研究員
雲林 秀徳 高砂香料(株), 総合研究所, 所長(研究職)
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キーワード | イリジウム / メタノール / 水素 / 不斉水素化 / ロジウム / BINAP / 立体選択的反応 / カルボン酸 |
研究概要 |
[IrCl{(S)-binap}]_2(1)あるいはそのメタノール付加体はメタノールを水素源とするアセチレン類の水素化触媒として有効である。しかし、オレフィン類に対しては十分活性が得られなかった。そこで本年度は0-H結合活性化一般についてさらに幅広い観点から検討を行った。まず、錯体1のロジウム同族体、[RhCl(binap)]_2(2)、を単離、同定し、そのX-線構造解析に成功した。一般に"RhCl(diphosphine)"で表される錯体は古くから「中性ロジウム触媒」として様々な触媒反応の前駆体として利用されてきた。しかし、ほとんどの場合in Situで調製され、そのまま触媒反応に用いられることが多く、単離、同定された例はごく希である。従ってその詳しい性質、反応性はよく分かっていない。錯体2は錯体1と非常に似通った構造をしていることが明らかになったが、その反応性は全く異なったもので、錯体1が空気、水などに非常に不安定なのに対し、錯体2は加熱条件下でも水、メタノール、カルボン酸などとは反応しない。しかし、分子状水素の活性化には有効と思われるので今後、本錯体の性質、反応性についての詳しい検討が必要である。また、なぜロジウム錯体とイリジウム錯体とで反応性が大きく異なるのかが解明できるとさらなる発展が期待できる。 錯体1は種々のカルボン酸と定量的に反応して単核のヒドリド(カルボキシラト)錯体,(S)-0C6-23-A-[Ir(C1)(H)(η^2-O_2CR){(S)-binap}](R=Me, Ar)(3), を与えた。なお、本反応では5種類の異性体の生成が可能であるが、(S)-0C6-23-A体のみが高立体選択的に得られた。この高い立体選択制はX線構造解析に基づくCPKモデルでの検討からよく説明できる。また、錯体3はイミン類、特に環状イミンの不斉水素化の優れた触媒となり、99%ee以上の不斉収率が達成された。今後、詳しい反応機構の検討が必要である。 その他、A. Togni等の編集になるWiley-VCH社発刊の単行本、"Catalytic Heterofunctionalization"、に0-H結合活性化に関する総説を招待寄稿した。
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