研究分担者 |
山縣 恒明 大阪大学, 基礎工学研究科, 助手 (70166594)
片岡 靖隆 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教授 (90221879)
真島 和志 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教授 (70159143)
作用 昇 高砂香料工業(株), 総合研究所, 主任研究員
雲林 秀徳 高砂香料工業(株), 総合研究所, 所長(研究職)
|
研究概要 |
本研究ではO-H結合活性化について幅広い観点から検討を行った。まず、[IrCl{(S)-binap}]_2(1)がメタノールを容易に活性化でき、錯体1あるいはそのメタノール付加体がメタノールを水素源とするアセチレン類の水素化触媒として有効であることを明らかにした。これらはプロキラルなオレフィンの不斉水素化触媒にも利用できるが、活性が十分でなく、不斉収率もデヒドロアミノ酸類の還元でせいぜい50%ee程度であった。錯体1は種々のカルボン酸をも容易に活性化し、可能な5種類の立体異性体のうち単核のヒドリド(カルボキシラト)錯体,(S)-OC-6-23-A-[Ir(Cl)(H)(η^2-O_2CR){(S)-binap}](R=Me, Ar)(2),を定量的かつ立体選択的に与えた。また、錯体2はイミン類、特に環状イミンの不斉水素化の優れた触媒となり、99%ee以上の不斉収率が達成された。今後、詳しい反応機構の検討が必要である。「中性ロジウム-ジホスフィン触媒」,"RhCl(diphosphine)",はin situで合成され、様々な触媒反応の前駆体として利用されてきた。しかし、単離、同定された例はごく希で、その詳しい性質、反応性はよく分かっていない。今回錯体1のロジウム同族体、[RhCl{(S)-binap}]_2(3)、を単離、同定し、そのX-線構造解析に成功した。錯体3は錯体1と非常に似通った構造をしていることが明らかになったが、その反応性は全く異なったもので、錯体1が空気、水などに非常に不安定なのに対し、錯体3は加熱条件下でも水、メタノール、カルボン酸などとは反応しない。しかし、分子状水素の活性化には有効と思われるので今後、本錯体の性質、反応性についての詳しい検討が必要である。また、なぜロジウム錯体とイリジウム錯体とで反応性が大きく異なるのかが解明できるとこれら錯体の触媒反応へのさらなる応用が期待できる。 その他、A.Togni等の編集になるWiley-VCH社発刊の単行本、"Catalytic Heterofunctionalization"、にO-H結合活性化に関する総説を招待寄稿した。
|