研究分担者 |
吾郷 昌信 丸石製薬(株), 中央研究所, 主席
矢後 素子 岩手医科大学, 歯学部, 助手 (30048475)
菅原 正和 岩手大学, 教育学部, 教授 (70111234)
瓜田 章二 福島県農業試験場, 梁川支場, 専門研究員
奥西 淳二 丸石製薬(株), 中央研究所, 研究員
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研究概要 |
天蚕の雌附属腺から単離したラット肝ガン細胞増殖抑制因子についてLC/MSとNMRにより構造解析した。その結果,分子量はLC/MSで447.0591と確認され,NMRの炭素結合部の分子式ではC_<19>H_<17>O_2の277であることを明らかにした。従って,残りの分子量170にあたる構造解析が最終段階となっている。この研究成果の一部は,International Journal of Wild Silkmoth & Silk Vol.7(2002)に掲載された。また,カイコの食道下体からは,3つのペプチド・タンパク質を同定することに成功した。リゾチーム,新規キモトリプシンインヒビター,機能の不明な糖タンパク質(P27K)である。特に,P27KについてはcDNAも決定しており,今後の有効活用が期待できる。この研究成果は,Journal of Insect Biotechnology and Sericology Vol.72(2003)に掲載された。 野蚕の一種であるウスタビガのフィブロインタンパク質についてはすでに粉末化することに成功していた。そこで,この元素分析をエネルギー分散型X線分析とサイクロトロン(PIXE)で解析したところ,天蚕フィブロインタンパク質に比較して,約4.5倍のSが含まれていることを明らかにした。この違いが,ウスタビガフィブロインタンパク質がリンゴ斑点落葉病カビに対して強い抗カビ活性を有することを反映するかどうかについては今後の課題である。 一方,新規の生理活性物質を探索するために,ウスタビガ繭と天蚕繭の熱水抽出画分について,マウス脾臓リンパ細胞を利用した免疫活性試験ならびにラット肝ガン細胞を利用した細胞増殖抑制試験をおこなった。その結果,ウスタビガ繭の熱水抽出画分において高い免疫活性を示した。現在は,その活性画分を単離精製中である。 これまでに単離精製したり,活性画分を手中にした機能性物質で,利用開発上有望なものとして,カイコのP27Kタンパク質および血液中の農作物病害糸状菌に対する抗カビ活性画分,天蚕雌附属腺からのラット肝ガン細胞増殖抑制因子,そして抗カビ活性を有するウスタビガフィブロインタンパク質であることを明らかにすることができた。
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