研究課題
基盤研究(A)
疾病に対する新たな治療法として、ヒトから採取された細胞・組織の応用が注目されている。特に患者から得られる細胞を増殖.分化させ、患者本人に戻す治療法は、拒絶がないことから最も理にかなった治療法である。そのためには各種の細胞を体外で増殖させ、さらに特定の方向に分化誘導する技術が極めて重要である。本研究では、新たな医用材料の開発研究として、ヒト骨髄間葉系幹細胞に着目し、主に心筋細胞、神経鞘細胞、内皮細胞への分化誘導法ならびに前臨床試験として免疫不全マウスへのこれらヒト組織の移植をおこなった。まず、ヒト骨髄間葉系幹細胞の心筋細胞への分化誘導法の確立を行い、細胞が採取しやすいヒト骨髄から、心筋細胞を得た。心筋症、心筋梗塞などの心疾患は、現在のところ心臓移植でしか救命できないことから必要性が高い。本研究で、NOD/SCIDマウス心臓へのヒト心筋細胞の移植実験が可能であることを明らかにしたことから、本実験系が前臨床的な生体内での詳細なデータを入手し、安全性の評価ならびに治療効果の推測を行う上で有用であることが判明した。またNOD/SCIDマウスへ、ヒト骨・肝を移植することでヒト化マウス(SCID-hu)を作成し、ヒト骨形成、造血、血管新生、肝再生モデルを開発し得たことから、ヒトでの造血、骨、血管、肝への薬剤の影響に対するスクリーニングや、これらの正常組織の再生を促進する物質の探索にも有用と思われる。さらに腫瘍血管新生モデル、C型肝炎ウイルス感染モデルの確立の成功は、これらの疾患の分子機構を生体レベルで明らかにするだけでなく、新たな薬剤の効果の判定、遺伝子治療の安全性・効率評価などに需要であり、前臨床試験の材料として汎用されることが期待される。このように本研究は、新しい材料(実験動物、医用材料)の開発に関する研究であり、その実用化へ向けた重要な基礎的検討を推進しえたものと確信する。また近年の動物実験の制限化を考慮すると、現在、病院医療廃棄物となっているヒト手術材料をインフォームドコンセントのもとに有効に利用していく本研究は、動物実験の縮小化の推進のみならず、ヒトでの細胞・組織の知見が得られることから、今後の医学研究にきわめて有効な方向性を示せたものと考える。
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