研究概要 |
造血幹細胞移植後のGVHDやGVLの主要部分はドナー由来のT細胞とレシピエント細胞とのアロ免疫反応と考えられる。本年度は、移植後免疫反応におけるOX40/gp34系の役割を明らかにし、この系を利用した慢性GVHDの早期診断と白血病の免疫治療の可能性を検討した。 1.造血幹細胞移植後患者を対象として、T細胞サブセット上のOX40の発現と臨床症状との関係について検討した。その結果、慢性GVHDを発症した症例では、末梢血のOX40^+CD4T細胞の割合が発症しなかった症例に比べて高値を示すことが判明した。また、慢性GVHD症例の中で、免疫制御療法に反応した例では、OX40^+T細胞の速やかな減少が認められた。これらのことから、末梢血T細胞のOX40発現がcGVHDのよい指標になりうること、慢性GVHDの病態にOX40^+T細胞が関与することが示唆された(Blood 66:3162-3164,2001)。また慢性GVHD皮膚病変の生検組織においてOX40^+T細胞ならびにそのリガンドであるgp34を発現した細胞の存在を観察した。後者がどのような細胞であるか現在検討中である。 2.末梢血単球よりGM-CSFとIL-4を用いて分化誘導し、単球培養上清によって成熟させた樹状細胞(DC)にgp34が発現することを確認した。CD4+T細胞とアロDCとの共培養による混合リンパ球反応(MLR)に抗gp34抗体を添加して影響を検討したところ、T細胞の増殖が90%以上抑制されることが判明した。また、gp34陰性のDCをソーターで精製して用いても同様の結果が得られたことから、T細胞とDCとの相互作用によってDCにgp34の発現が誘導されると推測される。以上より、OX40/gp34系を介する共刺激シグナルが最終的なT細胞のサイトカイン産生や細胞増殖に極めて重要な役割を果たしていることが示された(投稿中)。 3.レトロウイルスペクターLZRSにgp34を組み込んだベクターを作成し、これを用いて膀帯血のCD34+細胞をトランスダクションして約40%の細胞に導入できることを確認した。このベクターで急性白血病の白血病細胞をトランスダクションしてgp34強陽性としたものを、ex vivoでの白血病特異的な自己またはドナー由来のT細胞を刺激・増殖させる試みを行っている。これまでに、gp34陽性の白血病細胞がアロT細胞をより強く増殖させるという結果を得ている(投稿準備中)。
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