研究概要 |
主たる糖尿病遺伝子は膵_細胞で発現していることは疑いない。最近申請者らは、単因子遺伝タイプの2型糖尿病(MODY)の原因遺伝子解析によって、膵と発生原基が共通である小腸も疾患発症に協調して関与する事を見い出した。従って,両組織で共通発現する遺伝子を先ず網羅してハウスキーパーを除去し、特異的なiSNPを集積して糖尿病発症との関連解析に供することは、効果的である。そこで初年度は、候補遺伝子を包括的に把握するための第一歩として、ゲノム手法を用いてこれら二つのヒト組織における主たる発現遺伝子をEST(expressed sequence tag)として網羅し、カタログ化している。ヒト膵ラ氏島遺伝子を網羅するために無作為選択によって同cDNAライブラリーから約1万個のESTを既に決定した。次いで、インスリノーマにおいてはインスリン合成や分泌に関連した遺伝子群の発現が選択的に上昇していると考えられたので、同主要組織由来のヒトESTも10,099個を集積した。ヒト小腸からは9,355個を収集した。有力候補をこれらのプールから効率的に選別するためには、コード蛋白機能を考慮した二次的選別を行うことが効果適である。そこで、種々の生理実験が行いやすいげっ歯類のEST収集も同様に開始した。現時点では、ラット正常膵ラ氏島から8,000個を、マウスのインスリン産生細胞株MIN6-m9から8,070個を収集しており、この数は現在も増加している。これらのESTを搭載するマイクロアレイシステムの基本反応条件も初年度の研究でほぼ樹立されている。
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