3種類の転写因子遺伝子のcSNPとiSNP解析による感受性遺伝子の同定 <HNF-4a遺伝子> Thr-130-lleは非糖尿病者においても見い出される変異である。軽度な異常が2型糖尿病の発症リスクとなる可能性を考えて出現頻度を検討したところ、Thr-130-lle変異は2型糖尿病群で有意に高頻度であった。しかし、臨床所見を検討すると、耐糖能とは関連せず、HDLコレステロールと有意の関連を認めた。変異蛋白の機能解析の結果、MIN6細胞では野生型と有意差を認めなかったが、HepG2細胞と肝細胞では有意の機能低下を認めた。従って、同変異は2型糖尿病における肝特異的な表現型のリスク因子となる可能性が明らかとなった。 <Beta2/NeuroD遺伝子> 当初、Ala-45-Thr変異は1型糖尿病と関連すると報告されたが、多施設の検討では現時点で見解の一致はみない。そこで我々は、非MODYの若年症例と健常者について出現頻度を検討したところ、Ara-45-Thr変異は糖尿病群で有意に高頻度で見い出されたので、糖尿病のタイプではなく若年発症のリスク因子であると考えられた。 <LRH-1遺伝子> SHP遺伝子異常は若年の軽度肥満の原因遺伝子であることを既に報告した。さらに、同遺伝子異常は2型糖尿病発症のリスク因子であることをさらに明らかにした。LRH-1はSHP遺伝子発現の調節因子であり、糖尿病遺伝子の重要な候補である。そこで、同遺伝子についてスクリーニングを実施したところ、多数のSNPを同定した。高感度ハプロタイプの解析により、プロモーター領域の多型と糖尿病発症との間で有意の関連を認めた。転写調節に及ぼす影響を解析したところ、変異は新たな転写抑制因子をリクルートすることが示唆され、下流のインスリン分泌に関連する遺伝子発現が低下することによって、耐糖能障害が生じる機序が考えられた。
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