研究分担者 |
周東 智 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 助教授 (70241346)
上原 孝 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 助教授 (00261321)
大熊 康修 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 助教授 (20127939)
村山 俊彦 千葉大学, 薬学部, 教授 (90174317)
齋藤 洋 日本大学, 薬学部, 教授 (00012625)
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研究概要 |
老化促進モデルマウス(SAM : senescence accelerated mouse)のSAMP8およびSAMP10は学習記憶障害を示し,痴呆を主とする神経変性疾患の病態モデルとして,また脳の老化機構解析のモデルとして有用である.本年度は,1)SAMP8脳における生化学的・組織化学的特徴の解析,2)SAMP8系へのハマボウフウ抽出物の経口投与の記憶障害への効果,3)連鎖解析によるSAM老化責任遺伝子の探索・検討を行い以下の知見を得た. 1)SAMP8脳においてSAMP8脳のIL-1β IL-6およびTNF-αの発現は10ヶ月齢の海馬でSAMR1に比べ有意な上昇が認められた.SAMP8における学習記憶障害にサイトカイン発現の異常が関与する可能性が示唆された.電顕レベルの解析では、SAMP8の脳梁や脳幹部において、神経細胞の軸索突起を取り囲むミエリンが変性していた。ミエリン変性は生後2カ月齢から認められた。ミエリン変性の原因としてオリゴデンドログリア細胞がなんらかの障害を受けていることが考えられる。 2)記憶障害を発症するSAMP8(3〜6カ月齢)マウスにハマボウフウ抽出物を2ヶ月間経口投与し(15mg/kg),Morris's water maze法ならびに受動回避反応にて記憶能への影響を検討したところ,学習記憶障害が改善された.さらにハマボウフウ投与は老化皮膚の改善作用も認められた. 3)連鎖解析によってSAMP8の学習記憶障害に関与する遺伝子の染色体上の位置を明らかにする目的で、学習記憶障害の表現型およびSAMP8とJF1(正常マウス)の遺伝子型について検討した。SAMP8とJF1のF1及びF2世代を作成し、学習記憶障害の遺伝様式について調査するとともに連鎖解析を検討中である.マイクロサテライトマーカーによる遺伝子型の調査から、JF1は85%以上でSAMP8と異なった遺伝子型であることが明らかとなった。F1およびF2世代の行動解析結果はSAMP8とJF1の中間に分布し、F2は連続したより幅広い分布であり、最小遺伝子数の推定値が1.55であるとから学習記憶障害は比較的少数の主遺伝子に支配された多因子遺伝であると考えられた。
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