研究概要 |
現在主流である直接通電型の高温壁を持つ熱拡散塔に代わり,製作時の生産性,信頼性,保守性に優れ,また,運転時の経済性でも有利な蒸気加熱壁を高温壁として持つ熱拡散塔の設計,製作および運転を行うことにより,これまでの研究成果を基に深冷壁熱拡散塔の実用化を推進することを目的として,以下の項目について研究を行った. 1.装置の設計および製作 既往の数値シミュレーション手法を用いた分離性能解析を行ない,加熱管外径および冷却管内径の概略寸法を決定した.その結果に基づき,本装置の基本設計を行なった.加熱壁には,電気加熱式のボイラからの蒸気および電気ヒータの加熱温水を熱拡散塔上部から供給できるようにした.冷却用液体窒素の供給にあたり,冷却管外側の液体窒素充填槽の液位を検知した自動供給ラインと,塔の運転状況に応じて手動で供給するラインを設けた.液体窒素による熱収縮および蒸気/温水による熱延びを考慮し,スライド式の変位吸収機構を設けた.供給流,濃縮流,減損流中の重水素濃度測定には高分解能質量分析計を用いるため,サンプリングラインを設けた.トリチウム濃度測定のための電離箱を中心とした計測システムも併設した. 2.熱管型深冷壁熱拡散塔による水素同位体分離実験 上項で製作した熱管型深冷壁熱拡散塔による水素同位体分離実験を行い,H2-HD系,H2-HT系,D2-HT(DT)系において,Yamamotoらにより開発された2次元流れ・濃度分布計算プログラムから得られた予測と実験結果との比較を分離係数について行い,計算プログラムの予測精度を確認した. 3.熱拡散ファクタの再評価 2次元流れ・濃度分布計算プログラムの予測精度をさらに向上させるため,熱拡散ファクタの計算に用いられる物性値(熱容量・分子間ポテンシャル)の見直しを行い,熱拡散ファクタの算出に用いられる物性値を正確なものにすることができた.
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