研究課題
基盤研究(A)
本研究は高速増殖炉用の新型熱交換器の原理実証を進め、今後の研究を促進することにあった。本予算の交付前より実験研究を進め、本研究ではガリウムでの実験に引き続き、鉛ビスマスを熱媒体の候補として実際に実験しその適用性を確認することにあった。高速増殖炉の2次ナトリウム系は、蒸気発生器(SG)に導かれタービン動力となる。本研究は2次系のナトリウムの変わりにナトリウムとも水とも反応性の低い熱媒体(鉛ビスマス共晶体)を導入し、中間熱交換器(IHX)とSGとの機器一体化によりナトリウム水反応の排除とプラント規模の縮小の一石二鳥を狙う。平成12年度は、従来ガリウムを使用してきた実験装置を改造し鉛ビスマスを熱媒体として実験できるように再整備し、300℃近い温度で循環させるため有機冷却材の冷却ループを付加して、高温鉛ビスマス実験の装置組立てをした。また自然循環にて熱交換実験を行い、熱伝達特性を調べ、鉛ビスマスは他の熱媒体と比べ自然循環の流速が少し高い値を得ることができ、自然循環に適した流体であることを確認した。平成13年度は電磁ポンプを接続し強制循環実験を行った。電磁ポンプによる鉛ビスマス流動の技術や流速の計測など特有の問題点を克服するノウハウを得た。鉛ビスマスは金属面との濡れ性が非常に不安定で電磁流量計が不安定であり、温度揺らぎによる相互相関流量計を開発した。熱伝達特性はガリウムの場合よりかなり悪くSabottineの式に近い値となることを見出した。平成14年度は気泡によるエアーリフト強制循環の実験研究を行った。エアーリフトは水での経験が豊富であるが、大阪大学ではそれに比重6のガリウムと比重10の鉛ビスマスでの実験を行い、比重6と10の実験値を得た。ガス流量が小さく流体の循環量も低い領域では比重によらず水での経験則が成立するが、ガス/流体のスリップ比が3に近づくと駆動力は飽和することを見出した。以上本研究により鉛ビスマスとガリウムの熱媒体としての基礎特性を把握でき、重液体金属取扱いのノウハウを幾つか獲得できた。これらは現在エネルギー総合工学研究所、革新的実用原子力技術開発での鉛ビスマス熱伝達の研究と新型熱交換器の設計研究や核燃料サイクル機構で実施中の高速増殖炉の実用化戦略研究に資することができる。
すべて その他
すべて 文献書誌 (2件)