研究概要 |
本年度は,平成13年5月に海底底質環境に大きな特徴をもつ富山湾の滑川地先において現場調査を実施した.マルチビームによる調査とダイバーによる調査との比較の結果,海底環境が変化する場所で,マルチビームソナーの音響データにおいて明確な違いを感知でき,海底底質の判別が可能であることが明らかになった.さらに,平成13年7月から8月にかけてチュニジア共和国Zarzis市沖合いに分布する,Posidonia oceanica藻場の分布調査を,チュニジア国立海洋科学技術研究所と共同で調査船Hannibal号を用いて行なった.地中海の15-35m深の海底に分布するポシドニア藻場と藻場外の底質の分布とをナローマルチピームソナーを用いることにより音響的に区別できることが示された.これらの結果は,東京電通大学で開催されたシンポジウムで報告した.さらに,マルチビームソナーの音響学的な特性を明らかにするための基礎的な実験を岩手県上閉伊郡大槌町の船越湾において10月に行なうとともに,湾内外のタチアマモ藻場の分布を測定した.本実験では,発信する音波強度と受信する音波のゲインを変化させデータを収録した.以上述べた今年度の調査データをもとに,底深により変化させるマルチビームソナーの発信音波強度と受信音波のゲインを基準化し,海底の底質判別のためのプログラム開発をおこなった.その結果,ソフト的な処理を施すことで,どのような深度にある底質でも基準化した値で底質に依存する反射強度を得られることが可能であることが明らかになった.したがって,基準化された底質の反射強度のデータベースを作成することが来年度の重要な課題になる.
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