本研究はホヤ発生遺伝学の展開をはかることを目的としている。カタユウレイボヤ(Ciona intestinalis)では、最近のcDNAプロジェクトによって多くの発生遺伝子の発現パターンが調べられている。しかし一般的にいってこれらの発生遺伝子の機能を解析することは技術的に困難である。そこで既知および未知のホヤ発生遺伝子の機能を理解するために、ホヤヘの発生遺伝学的研究手法の導入をはがることを考えた。カタユウレイボヤは、世代時間が2カ月と短いこと、配偶子の採取が通年可能なこと、雌雄同体で自家受精が可能なことなど、発生遺伝学展開のための実験動物に適した利点を持つ。昨年度はまずこれまでに我々がすでに一応確立した室内飼育の方法を再改良し、具体的に大量のホヤの飼育を実施した。本年度は、次に、ENUを使った突然変異体の作製に着手した。現在ENU処理された親から由来した幼若体が順調に育ち、F1を得る段階に進んでいる。今後この方法を駆使した研究をさらに続ける予定である。一方、本研究ではトランスポゾンベクターTc3やスリーピングビューティを改良して、ホヤでのトランスポゾンタギング法を確立することも大きな目的である。現在、予備的実験を進めており、特に初期発生過程での形態形成に重要な役割を果たす機能遺伝子の単離と同定を試みている。また、本手法の将来的な利用を想定し、卵や胚や幼生の凍結保存法の確立を試みている。また、ホヤのストレインを確立するためにも、自然集団間での遺伝的バックグランドの解析が必要あり、その解析を行った。
|