研究概要 |
本研究は,無傷の動物から脳回路網の活動を単一のニューロンレベルで光学計測する非侵襲計測システムを構築し,試用することを目的とする.本年度は,昨年度製作した共焦点レーザー高速スキャンシステムの画像処理システム部分を開発を加え,開発した光学計測システムを用いて,実際にゼブラフイッシュの脳ニューロンの活動を計測した.512×512画素のイメージを260ミリ秒ごとに取り込む平面スキャンと1走査線を2ミリ秒ごとに取り込むラインスキャンを主に用いて,ゼブラフィッシュ稚魚の後脳に存在するマウスナー細胞の抑制性シナプス応答を記録することに成功した.ゼブラフィッシュの稚魚は体が透明であるので,カルシウム蛍光指示薬(Calcium Green-1Dextran)でラベルしたニューロンの活動を体の外から光学計測できた.マウスナー細胞の活動電位に伴う蛍光強度の変化は,べースラインのおよそ60%であり,加算処理をせずに単一のニューロンの活動を記録できた.抑制性シナプス応答がこの活動電位に伴う蛍光応答を減弱させることを利用して,抑制応答を計測した.光学計測したシナプス応答は,パッチクランプ法を用いて電気生理学的に記録したシナプス電流により確認した.本研究成果は,無傷動物の脳から抑制性シナプス応答を計測した初めての例で,Joumal of Neuroscience誌に発表した.
|