1997年以来、羊、マウス、牛や山羊で体細胞の核移植で産子が得られたことがあいついで報告されている。2000年になって、豚でも産子作出の成功例が報告されたが、その成功率は牛に比べて極めて低い。そこで、本研究では、豚の胚盤胞、胎子あるいは成体の体細胞から培養細胞株を樹立し、未受精卵へ核移植を行い、体外での胚盤胞への発生能ならびに雌豚へ移植後の産子への発生能を調べることを目的に実施する。本年度は、核移植のレシピエント卵細胞質として用いる卵胞卵の体外成熟条件、除核方法、単為発生誘起法をまず検討し、ついで成豚の卵丘細胞より樹立した体細胞の核移植を行って胚盤胞への発生能を調べた。その結果、未成熟卵胞から採取した卵子を、mNCSU37培地で44時間体外培養を行うと、85〜90%が成熟することが判明した。しかしながら、培地への血清の添加や低酸素気相は成熟率に影響しなかった。ついで、電気刺激を与えた後、サイトカラシン添加培地で4時間培養して単為発生を誘起し、その後6日間培養して胚盤胞への発生能を調べた。また、電気刺激後、6-DMAP処置の影響を調べた。その結果、6-DMAP添加区における胚盤胞への発生率は25%と無添加区の9%に比べて有意に向上した。この条件下で、培養卵丘細胞の核移植をおこなって6日間培養したところ、約10%が胚盤胞に発生することが判明した。
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