メキシコ、テオティワカン国家の宗教と政治機構、そしてこの古代計画都市の起源を明らかにするため、主要モニュメントである「月のピラミッド」を総合調査。メキシコ政府の国立人類学歴史学研究所との共同調査として平成12、13年度3ヶ月間発掘を行い、その後は現地の研究センターと愛知県立大学にて資料・遺物の整理、図画作成、データのコンピュータ入力や分析、出版準備を行う。2交代制で集中的にトンネル発掘を行い、「月のピラミッド」内部に7時期の重なり合ったピラミッド基壇を地山レベルで確認、また3基の生贄埋葬墓を発見した。平成12年度は「月のピラミッド」の中心付近、6期基壇の盛土内に17体の人頭骨からなる生け贄埋葬体が出土。また「月のピラミッド」上層部に新しく掘られたトンネルでは、5期ピラミッド基壇の頂上床面が確認され、さら平成13年度調査ではこの基壇の頂上中心付近で、破壊された神殿の一部と、王墓、または重要人物の生贄墓と思われる2つの墓坑を頂上床下に発見した。一方トンネル調査と平行して「月のピラミッド」西側に隣接する建物群では、中庭や中心の大広間等を縦断する南北トレンチと部屋の一部を発掘、住居建築資料や遺物と共に改築跡、崩壊時の焼け跡、また黒曜石工房からの加工破片堆積層など、エリート集団の生活復元資料を得た。同時に「月のピラミッド」を含む都市中心地区の3次元地図作りも開始。平成12年にセスナ機からの航空撮影を実施、13年にかけて一部の現地測量を行い、「月の広場」付近の地表面三次元グラフィック原図はすでに完成。多量の遺物や、また墓出土の完形副葬品の分析は、主に現地の研究センターで現地専門家や大学院生を中心に行っている。結果として、古代国家形成期の宗教の重要性、軍事組織の中心役割、またモニュメントや生贄埋葬墓に象徴される集権的王権の存在が指摘されている。
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