北米における日本型生産システムの受容と普及および変容に関する実態研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12372004
• 研究機関: 帝京大学
• 研究代表者: 安保 哲夫 帝京大学, 経済学部, 教授 (90013028)
• 研究分担者: 上山 邦雄 城西大学, 経済学部, 教授 (90095307) ; 板垣 博 武蔵大学, 経済学部, 教授 (20125884) ; 河村 哲二 武蔵大学, 経済学部, 教授 (20147010) ; 山田 信行 帝京大学, 経済学部, 助教授 (80287002) ; 公文 溥 法政大学, 社会学部, 教授 (50061239)
• キーワード: 日本型経営・生産システムの国際通用性 / ハイブリッド(適用・適応)モデル / ジャパナイゼーション / アメリカ型生産システム / アメリカ合衆国 / 自動車産業 / 電機産業 / 半導体産業

研究概要

本科研費補助金プロジェクトの最終年度である平成13年度は、昨年度に引き続き北米調査(8月末〜9月末)を実施するとともに、昨年度調査の成果輪と合わせて、現地聴き取り調査を含め、収集したデータ・資料を分析し、研究成果のとりまとめ作業を行った。本年度北米調査では、研究代表者、分担者のほぼ全員、研究協力者も加えて、合計14名が、4グループ・地域に分かれ、米、加、メキシコに立地する日系、米国企業(一部韓国系)の、工場、地域本社等、合計37カ所を訪問調査した(自動車組立8-米系2含む、同部品11、電機組立7、同部品4、半導体1、他6カ所)。本年度8月末までは、昨年度調査の詳細な会社・工場の調査記録をまとめ、整理するとともに、今年度調査の対象工場選定や企業交渉等、準備にあてた。また2〜3月には、国内工場の経営・生産システムの現状を解明する目的で、主に自動車産業を対象に東海、九州、および中国地区の工場調査を実施した。
本研究は、アメリカにおける日本型経営・生産システムの受容と変容、および日本企業におけるその変容の現状を、「ハイブリッド(適用・適応)・モデル」分析を活用し、北米現地工場(日系・米国現地企業等)の実態調査を通じて解明することを、主目的としているが、昨年度と合わせて、今年度、以下の点が成果として得られた。
(1)本研究の出発点である北米調査(1986年・89年)後10数年を経た北米日系工場の経営・生産システムの変容の追跡調査できた。(2)当研究グループの他の主要調査(東アジア:1992〜93年、英国:1997年、欧州大陸;1998年)の研究成果と比較、検討可能な基礎データが得られた。(3)アメリカの産業・企業復活の現状を、「ジャパナイゼーション」の実態だけでなく、アメリカ企業の経営・システム革新を明らかにしうる重要なケースが得られた。
これら研究成果の分析を通じ、(1)自動車、電機のバリエーションの違いを含むが、北米における日本型経営・生産システムの現地定着の「落ち着き先」のパターンがかなり明らかになった。その結果、(2)日本型システムの国際通用性と波及の問題を再検討することが可能となった。また、(3)「日本型」システムの変容の必然性とその方向に一定の見通しが得られ、全体に、「アメリカ型」と「日本型」のシステムモデルの相克を焦点とする世界的な生産システムの拡散と収斂(「ハイブリッド化」)の動向について、産業別・地域別の相違を含め、具体的に明らかにする大きな見通しを得た。

研究成果

• [文献書誌] Abo, Tetsuo: ""Competition and Cooperation between the Japanese and British Management Models in the UK : International Transfer Problems of Intangible Management Systems,""in P. Banerjee and F. Richter, eds., Intangibles in Competition and Cooperation, Palgrave, Forthcoming. NA. 111-124 (2002)
• [文献書誌] 安部悦生: "イギリス"「経済の発展・衰退・再生に関する研究会」報告書. NA. 1-26 (2001)
• [文献書誌] Hiroshi ITAGAKI: "Japanese Multinational Enterprises : Paradox of high efficiency and low profitability"Asian Business and Management. Vol.1(forthcoming). (2002)
• [文献書誌] 上山 邦雄: "アセアン自動車産業と日本自動車産業"(財)機械振興協会経済研究所『日本の自動車産業の対東南アジア戦略における現状と課題』. 第1章. (2002)
• [文献書誌] 河村 哲二: "「『1990年代の「持続的好況」の特徴と問題点-戦後パックス・アメリカーナ経済システムの転換と「ニューエコノミー」』"経済理論学会『年報』(近刊). 第39巻、. 1-16 (2002)
• [文献書誌] 公文 溥: "欧州における日本型ハイブリッド組織の形成-ネッドカーのケース"法政大学社会学部学会『社会志林』. 第47巻第3号. 159-191 (2001)
• [文献書誌] Kumon Hiroshi: "Japanese Investment Patterns"Allan Bird ed., Encyclopedia of Japanese and Management, Rutledge. NA. 248-250 (2002)
• [文献書誌] Kumon Hiroshi: "Overseas Production"Allan Bird ed., Encyclopedia of Japanese and Management, Rutledge. NA. 351-354 (2002)
• [文献書誌] 苑 志佳: "56年体制-中国社会主義体制の形成・変容と「パックス・アメリカーナ」-"立正大学『経済学季報』. 第51巻第1号. 69-112 (2001)
• [文献書誌] 小井川 広志: "カレンシーボードの経済学:香港政庁の政策対応"『名古屋学院大学論集』社会科学編. 38-1. 115-138 (2001)
• [文献書誌] Oikawa, Hiroshi: "Re-examination of the 'Large Industrial Firm Paradigm' in East Asia : Comparative Case Study of the Value Chain Analysis to Proton in Malaysia and Accer in Taiwan"Research Report, Judge Institute of Management Studies, University of Cambridge. NA. 1-16 (2002)
• [文献書誌] 山田 信行: "グローバリゼーションと「国民社会」-労使関係は収斂するか"社会学評論. 53・2. 122-137 (2001)
• [文献書誌] 山田 信行: "周辺社会における技能形成と労使関係-「ポスト新国際分業」の展望"帝京経済学研究. 35・1. 111-125 (2001)
• [文献書誌] 銭佑錫, 清水剛: "M&A後のマネジメントと企業の生存"薄井彰編『バリュー経営のM&A投資』中央経済社. NA. 173-199 (2001)
• [文献書誌] 銭佑錫: "途上国における国際合弁企業の新たな効用:経営資源の移転・蓄積・創出・還流"中京経営研究. 11巻2号. 221-246 (2002)
• [文献書誌] 安保哲夫, 板垣博, 上山邦雄, 河村哲二, 公文溥(苑志佳他訳): "日本式生産方式的国際移転"中国人民大学出版社. 304 (2001)
• [文献書誌] 安部悦生 他: "ケースブック アメリカ経営史"有斐閣. 363 (2002)
• [文献書誌] 板垣博, 吉原秀樹編: "国際経営論への招待(第6章「海外生産」担当)"有斐閣. 344(20) (2002)
• [文献書誌] 村岡輝三, TWU照彦, 北原淳編著: "アジアの経済発展における中小企業の役割(「台湾における中小企業活力の"秘密"を探る」)"名古屋大学国際経済動態研究センター. 219(127-163) (2002)
• [文献書誌] 村岡輝三, TWU照彦, 東アジア地域研究会, 他編: "東アジア経済の構造(「東アジア経済の発展と華人ネットワーク」"青木書店. 225(101-124) (2001)
• [文献書誌] TWU Jaw-Yann, Glenn D. Hook, Hasegawa Haruyuki ed.: "The Political Economy of Japanese Globalization(Globalization and oriental capitalism)"Routledge. 224 (2001)
• [文献書誌] 苑 志佳, 丸川智雄編, 共著: "中国企業の所有と経営"アジア経済研究所. 417 (2002)