研究課題
1980年代以降アフリカ各国で実施されてきた構造調整計画は、基本的に民間資本活動の活性化によってマクロ経済指標の改善を図ろうとする開発戦略であった。国の対外債務削減のためのこの戦略によって、アフリカ各国では貧富の格差が拡大しつつあると言われている。重債務貧困国(HIPC)に認定されたアフリカ各国で、とりわけその農村部において貧困層がどのような状態にあるのか、ザンビア、タンザニア、ガーナにおいて現地調査を実施した。ザンビアでは、首都ルサカ近郊の農村で調査を行い、メイズの対肥料交易条件の悪化、それによる中規模メイズ生産農家の貧困化が顕著であることが明らかとなった。さらに近年、エイズ/HIVによると思われる成人や子供の死者の増大が農業生産に少なからぬ影響を与えつつあることも明らかになった。タンザニアではアルーシャ州の半乾燥地域の農村の水利組織に関する調査を行い、水利の時空間的組織化や生産物処分権に関するモラル・規範に関して分析を行った。そして水利組織に対する国家の調整介入の実態についても調査を行った。ガーナでは、アクラおよびケープコースト近郊の換金作物栽培農村で実態調査を行い、「非伝統的」輸出作物であるパイナップルの生産が活発化してきていることが明らかになった。このような新しい輸出作物生産が小農にとってどのような影響をもたらすか今後さらに詳しく調査する必要があるが、パイナップル生産に関していえば、販売・輸出部門における垂直的統合の進展で小農生産が周縁化される可能性が存在することが明らかとなった。この他に、ルワンダ及びナイジェリアにおける農村貧困問題に関して文献による調査を実施した。前者では農業生産に対する内線の影響を検討し、後者では長引く経済不況の影響について調査を行った。
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