研究課題
基盤研究(A)
壁画の劣化要因の推定と保存環境の保存のために、智化寺境内および智化殿内において環境測定を行った。境内では、温湿度、風向、風速、降水量、日射等を、殿内では、温湿度測定、照度、紫外線強度を測定した。携帯型蛍光X線装置により智化殿壁画の顔料の化学分析を行い、顔料を推定することができた。山西省の崇福寺(朔州)、仏宮寺(応県)、華厳寺(大同)、善化寺(大同)、岩山寺(繁寺)、仏光寺(五台)の壁画を調査し、壁画の構造と劣化状況の関係について考察した。美術史の観点からは、智化寺壁画の主題の解明を行うとともに、図像の系譜を考察した。比較のために、北京の法海寺とケイ県の独楽寺の壁画の図像調査を行った。また、『元代画塑記』の読解を進めた。壁画の伝来については、智化寺文博館閻玉良主任の協力を得て、同市内崇文区西斜街所在の臥仏寺、同市宣武区所在の法源寺、中国文物研究所資料室、北京市公文書館において調査した。その結果、1930年代以来の資料を見る限り、現在壁画がある仏後壁は存在しておらず、移動があったことは確実ではある。しかし、その具体的な状況については、崇文門外の寺院から移された、という伝承以外の事実を見いだすことはできなかった。壁画修復の分野では、「智化殿壁画」損傷地図の基本となる写真撮影および撮影データのデジタル化を行ない、損傷地図を作成した。この際に確認された損傷の修理提案も行った。