研究課題/領域番号 |
12375003
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西田 利貞 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40011647)
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研究分担者 |
中村 美知夫 日本モンキーセンター, リサーチ・フェロー (30322647)
五百部 裕 椙山女学園大学, 人間関係学部, 助教授 (20252413)
早木 仁成 神戸学院大学, 人文学部, 助教授 (60228559)
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キーワード | チンパンジー / マハレ山塊国立公園 / 文化的行動 / 行動の発達 / リーフグルーミング / ワイピング / 求愛誇示 / 対角毛づくろい |
研究概要 |
本年度は、マハレのチンパンジーの文化的行動の発掘と、すでに文化的行動と判明しているものの発達の問題を中心に研究した。アカンボウ、コドモ、ワカモノを対象に、かれらの行動をシステマチックにビデオ撮影して、映像素材を収集した。新しいファッションとして発見された行動として、「口を尖らせて水をかき回したり飛ばしたりする」水遊び行動や「四足で枯葉のパイルを押したり、引いたりする」独り遊び行動がある。前者は今回3頭の若者に見られたが、かつて観察されなかった行動である。後者は、2歳から始まり、コドモ時代によく見られ、ワカモノ期のうちに消失するようである。これら2つのパターンが、今後どのように伝播、あるいは衰退するのか調べたい。文化行動である「リーフ・グルーミング」の機能は、これまでまったく知られていなかった。今回、系統的なデータ収集により、身体から採取したシラミを口唇から葉に移し、折り曲げた葉にシラミを挟んで押し潰す行動であることを発見した。文化的行動である「対角毛づくろい」は、5歳から見られ、コドモ時代を通じて母との間でのみ見られるが、ワカモノになると、母親以外のメスとも見られるようになる。しかし、オトナの雄との間では、本人がオトナになるまで見られない。他に、水中石投げ誇示、ワイピング行動、「シュラッブ・ベンド」求愛誇示や「リーフ・クリッピング」求愛誇示など多くの文化的行動について、各発育段階の個体のデータを集めたが、各行動の発達のプロセスを十分説明するにはまだだ不十分で今後のデータ蓄積を待つ。マハレ以外のサイトとの行動比較としては、ウガンダのキバレ森林のチンパンジーを観察した。その結果、キバレの対角毛づくろいは持続時間が長いこと、掌同士を握りあう形式の対角毛づくろいがカニャワラには存在することがわかった。
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