類人猿と人類の共生・共進化に関する社会生態学的研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12375004
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 山極 壽一 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60166600)
• 研究分担者: 浜田 穣 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (40172978) ; 湯本 貴和 京都大学, 生態学研究センター, 助教授 (70192804) ; 黒田 末壽 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (80153419) ; 澤田 昌人 京都精華大学, 人文学部, 助教授 (30211949)
• キーワード: ゴリラ / チンパンジー / 人類 / 環境 / 社会 / 生態 / 共生 / 共進化

研究概要

本研究は、人類発祥の地であるアフリカの熱帯林で、人類に最も近縁なゴリラとチンパンジーが発達させてきた社会生態学的特徴を調査し、同じ環境で人類が示す特徴を比較することによって、類人猿と人類の種分化の歴史を再構築することにある。本年度はその比較研究のために最適と思われる調査地を選定し、予備調査を行った。まず、ルワンダのカリソケ研究所でヴィルンガ火山群とカフジ・ビエガ国立公園に生息するゴリラとチンパンジーについてこれまで収集された資料を整理し、狩猟採集民についての調査可能性を検討した。タンザニアのマハレ国立公園でも比較研究のためにチンパンジーの生態調査を行った。さらに、ガボンのムカラバ保護区では同所的に生息するゴリラとチンパンジーの予備調査を行い、両種類人猿の植生利用、営巣行動、食性、種子散布すると考えられる果実種などについて資料を収集した。カフジとムカラバでは両種類人猿の糞や毛のサンプルを収集し、現在DNAの分析を京都大学霊長類研究所で行っている。ムカラバでは霊長類の音声を録音し、生息場所やロコモーションとの関連から種間の違いについて分析している。その結果、比較研究に必要な資料を収集する調査マニュアルを完成することができた。国内ではこれまでにガボンやコンゴ民主共和国で計測してきた形態学的資料から類人猿と人類の生長パターンの違いについて比較検討した他、アフリカの熱帯林の地域変異や狩猟採集民の生態学的特徴について分析を実施した。また、コンゴ民主共和国から海外共同研究者のKanyunyi Bsabose氏を日本へ招へいし、同所的に生息するゴリラとチンパンジーの食性を分析して、オーストラリアで行われた第18回国際霊長類学会でその結果を発表した。

研究成果

• [文献書誌] Suzuki,J.,Ohkura,S.,Hayakawa,S.& Hamada,Y.: "Time series Analysis of plasma Insulin-like growth factor-1 and gonadal steroid in Adolescent Japanese macaques."J.Reproduction & Development. 46(3). 157-166 (2000)
• [文献書誌] Yamagiwa,J.: "Factors influencing the formation of ground nests by eastern gorillas in Kahugi-Biega National Park."J.Human Evolution. 40(2). 99-109 (2001)
• [文献書誌] Sawada,M.: "Rethinking methods and concepts of anthropological studies on African Pygmies'world view"African Study Monographs. Suppl.27(in press). (2001)
• [文献書誌] 山極壽一: "家族の起源ヒコシュニティーの進化"家族問題研究所研究年報. 5. 9-17 (2000)
• [文献書誌] 山極壽一: "家族の起源:父性の創造"精神保健. 45. 1-5 (2000)
• [文献書誌] 湯本貴和: "屋久島の保全"遺伝. 55(2). 85-89 (2001)
• [文献書誌] Yamagiwa,J. et al.: "Mountain Gorillas : 25 years of Kavisoke"Cambridge University Press(in press). (2001)
• [文献書誌] 澤田昌人,山極壽一 他: "「眠りの文化論"平凡社. 250 (2001)