1923年から1935年まで関西に在住し、宝塚少女歌劇の管弦楽団員たちと共に交響楽団を創設し、定期演奏会活動を展開したヨーゼフ・ラスカと宝塚交響楽団についての研究において、当初提出した実施計画に基づき、主に以下の仕事を行った。1)ウィーン市立州立図書館音楽部門所蔵の《7つの俳句》(1960年作曲)の自筆楽譜を、3名の音楽家たちによって演奏・録音してもらい、2002年6月1日に同志社大学で開かれた美学会西部会研究発表会で、同作品を中心に、日本時代に作曲されたラスカの音楽とその意義について論じた。2)その後、宝塚歌劇団の管弦楽団より、昨年度科研費により演奏・録音された《日本組曲》を、同団の演奏会においても取り上げたいという知らせがあり、3ヶ月ほどの準備を経て、9月20日、宝塚歌劇場バウホールで抜粋ながら演奏された。研究代表者はこの事業につき協力を求められたほか、当日のステージでは司会の桂小春団治氏との対談の形で、ラスカの人物・作品について多くの聴衆に語ることができた。同団の固有の演奏会は60年ぶりのことであり、本研究における準備があったがゆえに実現されえたといっても過言ではない。3)2002年9月から10月にかけてウィーン市立州立図書館を中心に資料探索を実施し、ラスカがオーストラリアに帰国後に作曲した作品の資料を数多く複写・入手し、ラスカの生涯の活動に関するさらなる研究資料を得ることができた。以上のほか、以前からの依頼に基づき、近々刊行予定のOsterreichisches Musiklexikon(『オーストラリア音楽事典』)に"Laska"の項目を寄稿した。
|