研究課題
基盤研究(B)
本研究は、現在の琉球芸能の源である首里王府の尚育王代(1835〜47)におけるその環境と芸態を明らかにすることを目的とした。環境については旧尚家蔵の『冠船躍方日記』の翻刻と解読を通して御冠船芸能の諸役の任命、稽古や道具の準備の実態等が明確になり、多くの通説を訂正することができた。また芸態については、上記資料を援用しつつ入子躍の芸態が明らかにして国立劇場おきなわでその復活上演が行われ、また女踊りについては文献資料に残るが伝承の途絶えた演目の振付を復元し、さらに当該時期の絵画資料を参照し、また御冠船踊りが地方の村々に伝承して伝えられる村踊りの伝承を参考にしてかつての身体技法を明らかにし、講演と実演の会《首里王府の琉球芸能》においてその復元を試みた。入子躍は王府廃絶後に伝承が途絶えたものであるが、女踊りは明治以降、芝居や舞踊家に伝承されて甚だしく変質した。今回の尚育王代の女踊りの復元は、舞踊史における当該時期の意味を明らかにするとともに、近代における宮廷芸能の受容、あるいは美意職の変化を主題化する手がかりとなった。
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