研究課題
本年度は、日本占領下インドネシア地域(1942-1945)で製作された映画フィルムの所在調査を中心に活動を進めた。この活動は、主に国内での事前調査とフィルムの所在先であるオランダでの現地調査に分けられる。国内調査としては、まず戦時中の映画雑誌・書籍などを用いた文献調査を進めた上で、倉沢愛子氏(慶應義塾大学教授:アジア現代社会史)、山形ドキュメンタリー映画祭東京事務局、株式会社日本映画新社の協力を得て、何らかの形で残存している映像・文献資料の入手及び日本映画社ジャカルタ製作所の映画製作システム・スタッフ構成に関する情報収集を行った。これにより、現地における作品の確定作業が極めてスムーズに進むこととなった。外国の現地調査は3月に行われ、オランダのフィルム・アーカイヴ2機関(オランダ政府視聴覚アーカイヴ及びオランダ映画博物館)においてフィルムの確認とカタログ化のための資料収集が行われた。調査の結果、戦後インドネシア地域からオランダ軍が持ち帰ったフィルムの中にジャカルタで撮影されたものではないが、「大東亜共栄圏」向けに日本国内で製作され、各占領地に配給された教育映画・ニュース映画が新たに発見されるなど、当時の日本の映画によるポロパガンダ活動を立体的に位置付ける展望が得られた。来年度は、オランダで得たデータ・資料をカタログ化した上で、各作品の内容を分析し、占領下のインドネシア地域における映画製作活動に関する研究報告書を作成する予定である。