研究課題
平成13年度に進められた研究の概要は以下の通りである。まず研究分担者のうち彫刻を専門とする者が中心となって、聖林寺十一面観音像光背の復元案作成に向けた方針を決定し、昨年度製作した同光背の原寸大実測図をもとに、試案となる図面の作成を行った。11月4日に研究分担者が集合して同図に検討を加え、補正すべき点などを確認し、最終案の作成作業に着手した。また東大寺二月堂本尊光背の図様を、原品を参照しつつ拓本からトレースした上で描きおこす作業を進め、原寸大実測図が完成した。これをもとに来年度、同作品の復元図案の作成を行う。2月23日に研究分担者が集合し、午前に研究打合せを実施して本年度の総括を行うとともに、招聘した神戸大学助教授・黒田龍二氏に建築史的観点から大御輪寺本堂に関する報告を行っていただき、聖林寺像および光背との関係について討論しつつ、完成した光背復元図案に最終的なチェックを加えた。午後には昨年度同様、研究討論会を開催し、中国から馬世長氏(北京大学教授)、国内から浅井和春氏(青山学院大学教授)、加島勝氏(東京国立博物館金工室長)の三氏を招聘して関連テーマで研究発表を行っていただき、討論参加者として韓国から招聘した金理那氏(弘益大学校教授)、鄭于澤氏(韓国美術研究所副所長)を交えて、中韓日三国の古代仏教美術における荘厳の様相について活発な討論が行われた。また一年間を通して研究分担者は各自、研究計画調書に記した分担に沿って、当館を拠点に各地で作品調査ならびに資料収集にあたり、当該テーマについての検討を行った。