研究課題
基盤研究(B)
本研究は日本上代(飛鳥〜奈良時代)の仏像彫刻に対し、「荘厳」という観点から包括的に再検討を加えることを目的として行われた。研究活動を進めるにあたり、将来の研究の基礎となりうるような信頼度の高い資料の整備と、隣接する様々な研究領域にまたがる広い視野からの問題提起に最大の重点をおいた。以下に三年間の成果の概要を記す。(a)基礎資料の整備に関しては、上代彫刻の荘厳にまつわる遺品のうち、特に奈良時代の光背を重点的な対象に選び、組織的な共同作業をとおして、従来の研究にない精度と体系性を誇る、画期的な研究成果を得た。具体的には、(1)現在断片となっている聖林寺十一面観音立像光背の精査(実測図作成、光学的調査なども含む)、およびそれに基づく想定復元図案の検討と作成。(2)東大寺二月堂十一面観音像光背の、原寸大の正確な現状トレース図面の作成。(3)法隆寺伝法堂光背(3面)の、構造理解を中心とした精査(光学的調査を含む)。などを遂行し、研究過程で得た種々の写真資料や図面に、調査記録及び解題を加えて、当該研究成果報告書に「調査研究篇」として収録した。(b)研究分担者は3年間各自、日本上代の仏像荘厳に関わる諸問題について考究してきたが、その成果として、彫刻史のみならず絵画史・建築史・考古学・歴史学など、多彩な分野の専門家の執筆による9篇の論文が提出された。これらは研究成果報告書に「論考篇」として掲載した。(c)各年度末に三度にわたり、国内外から第一線の研究者を招聘して関連テーマで研究発表を行っていただき、研究分担者との間で討論する「国際研究集会」を開催した。そのうち初年度と第二年度分の記録を、研究成果報告書に付載した。(d)なお本研究の成果は、奈良国立博物館のホームページ上でも公開する。