本年度は、以下の各領域において進化的な視点から実証的な研究を行った。 1.殺人研究:海外の共同研究者とともに、きょうだい内での殺人について出生順位の影響を検討し、結果を国際誌に公表した。また、被殺人率に関して途上国を含めた国際比較を行い、経済的困窮と経済的不平等がどのように影響するかを分析した。 2.出生率・死亡率の性差:明治期の人口動態資料から、嫡出子、庶子、私生児ごとに出生・死亡率性差を分析した。その結果、庶子では男児、私生児では女児の出生率が高く、親による子の差別が行われていたことが示唆された。 3.適応的な認知バイアス:前年に引き続き、内集団と外集団の差別に関する認知バイアスがあることを4枚カード問題を用いて検証し、結果を国際誌に発表した。 4.進化的精神医学:海外の研究者と共同で、うつや不安には、無用なリスクから身を守る適応的な防御の側面があることを文献研究によって示した。 5.自閉症児の認知に関する実験的検討:自閉症児は共同注視において障害があるか、そのメカニズムを検討するために、視線方向への自動的注意に関する実験的検討を行った。 6.自閉傾向尺度に関する予備的研究:健常者を対象として、自閉傾向尺度(日本版)と図形埋め込み課題、クロニンジャーのTCI、いじめられやすさ、性差などの関係を予備的に調査した。 7.その他、類人猿における情動認知、新世界ザルの色覚に関する行動実験、乳幼児における数的認知の研究などについて実験を行った。
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