研究概要 |
(1)ラットを用い,音刺激の提示時間と提示順序それぞれを記憶する課題を設定し,同一ラットに訓練した。ほぼ3週間で訓練でき,課題遂行中のニューロン活動を海馬から記録した。 (2)マウスを用い,左右の光刺激の提示順序を覚える課題を設定し訓練した。数週間で訓練が完成する場合もあるが,学習が進まない個体もあり,装置や刺激のパラメータを改善することにした。 (3)マルチニューロン活動を記録し解析する新たな技術を開発した。まず電極近傍の全てのニューロン活動をもれなく検出するため,直径8ミクロンのタングステン・ワイヤーを内径100ミクロンのステンレスチューブに12本入れ,10個近いニューロンを同時記録し分離することができた。 (4)電極が入ったステンレスチューブを複数本装着し,個々のチューブ(12本の電極)を独立に操作できる小型のマイクロドライブを設計し作製した。またそのマイクロドライブに接続する,より小型でノイズフリーのディジタル方式ヘッドアンプを製作した。 (5)これら電極,マイクロドライブ,及びヘッドアンプで導出した多数のマルチニューロン活動jから個々のニューロン活動を正確に分離する方法として,独立成分分析法(ICA)をさらに改良したリアルタイムICA方式を開発し,そのプログラムを組み込んだ自動的データ解析システムRASICA(Realtime and Automatic Spike-sorting with ICA)を完成させた。 (6)これら記録・解析システムを用い,順序情報を含む記憶課題を行っているラットの海馬からマルチニューロン活動を記録した。これまでの結果から,課題を行っている際,個々のニューロン活動だけでなく,ニューロン間の機能的結合もミリ秒のオーダーで素早く変化することがわかった。
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