企業における情報技術の活用とそれに伴う従業員の働き方について、量的、質的データを基にして分析を行い、組織の柔軟性を考察した。また、自治体組織を念頭に置いて、地域情報化と行政サービスの実態についてデータを収集した。行政組織の情報化はこれからという状況にあり、しかも自治体の人口規模によって大きなばらつきがある。従って、行政組織の動向は企業組織の動きをモデルとして進行するであろうという前提に立って、主として企業組織の分析を幾つかの側面から深め、それらを総合して次のような点が明らかになった。 現在進行している組織柔軟性の特徴は、次の3点にある。第一は、個の職能レベル高度化による組織柔軟性の追求である。企業の組織、制度、人事管理システムを大きく変更するという側面よりは、一人一人の仕事とその遂行能力を高める方向として考えられている。第二に、職務遂行面での分権化が進行している。そして、この傾向は分権化の動向と並行している。第三に職能単位化とその統合システムの形成が見られる。職務遂行能力の向上期待とそれへの責任付与という組み合わせは、特に「自律型」組織形態ですでに実行されている。この自律型組織の比率は企業組織全体の中でまだきわめて少なく、むしろ職能組織制をとる企業において、自律型組織と類似した傾向が見られた。 以上の知見から、職能組織が、組織の柔軟化に関しての可能性を持っている。つまり構成単位が専門分野として分化した単位となり、その分化した諸単位の統合は、情報を用いた管理機能の高度化によって支えられる。これまでの企業、経営の情報化は、活動関連情報を集約し、意思決定の手段としてそれらを活用したが、さらに組織と情報が統合システムとして整備されるにつれ、「情報による管理」が精緻化され、この様式が組織の柔軟性の実質的な中身となっていくと考えられる。
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