情報社会の諸側面に関する文献を網羅的に検討し、そこから情報社会を構成している基本原則として、「経験の情報化」と「情報の経験化」の二つを抽出した。前者は情報の共有から発展して、情報の制御・リンク、情報の創生へという過程をたどっている。後者は業務と管理の情報化によって、新しいスキル、半断能力の必要性を高めている。これが柔軟化を要請する条件であるが、今のところ活動手段、環境条件から主体へという方向性が強く表れている。従って、経験の情報化から情報の経験化、そして情報の創造へという一連の流れは、個人主体を取り巻くシステムの領域で急速に進んでいる。システムの方に目を向けるなら、IT技術の浸透によって、組織形態とその柔軟性が高まっている。それらの現在進行している柔軟性の特徴は、次の3点に要約できる。第一は、個の職能レベル高度化による組織柔軟性の追求である。第二に、職務遂行面での分権化が進行している。そして、この傾向は組織全体の分権化の動向と並行している。第三に職能単位化とその統合システムの形成が見られる。以上の知見から、組織の柔軟化について、職能組織が多くの可能性を持っている。課制の廃止と組織のフラット化により、企業の中枢機構と組織を構成する各業務部門とが中間の組織をできるだけ省略して連結される方向にある。その場合の結合原理として、職能原理があらためて見直されることになる。組織の構成単位が専門分野に応じて分化した単位となる。そして、それらの分化した諸単位の統合は、情報を用いた管理機能の高度化によって支えられる。これまでの企業経営の情報化は、活動関連情報を集約し、経営決定の手段としてそれらを活用するという性格を持っていた。これを引き継ぎながら、さらに組織と情報が統合システムとして整備されるにつれ、「情報による管理」が精緻化され、この様式が組織の柔軟性の実質的な中身となっていくであろう。
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