本研究は、高齢社会の地域福祉の担い手として注目をあつめている市民事業体が経営体として継続可能な条件をさぐることを目的としたものである。対象は九州地域の生協グリーンコープ連合が設立した、グリーンコープ福祉連帯基金傘下の福祉ワーカーズ・コレクティブ(2001年12月現在で63団体)である。介護保険施行後、指定事業者として居宅家事・介護支援事業、ミニデイサービス事業等に参入した。 第1次調査ではワーカーズ・コレクティブの団体および個人を対象に、定量および定性調査を実施した。その分析からあきらかになったことは、(1)経営コストは時間費用で200%と出て、企業体とくらべても競争力がある。(2)生協による創業期支援が果たした役割が大きい。(3)ワーカーの分極化(やりがい型とボランティア型)を射程に入れた労働編成が課題である。(4)経営研修を含む代表とワーカーの研修プログラムが必要である、などである。 第2次調査では利用者とその家族を対象に、定量調査と定性調査の両方を実施した。ワーカーズ・コレクティブおよび代表の追跡調査およびケアマネージャー、地域の関連書団体のインタビュー調査もあわせて実施した。介護保険に対する評価は利用者、家族ともに満足度いが、利用率は約60%(全国平均49%)と抑制されており、その理由に需要と供給のミスマッチ(サービスのメニュー、時間帯、保険外利用等)が挙げられた。ワーカーズ・コレクティブの団体および個人にとっては、利用者数、ケア件数、ケア時間数共に急成長をみせ、ワーカー報酬、役員手当ともに増大し、経営的にも安定した。定性調査からは、身体介護と家事支援の区別がつきにくい実態に対し、報酬格差が大きすぎる問題が指摘され、家事介護1本化への制度の手直しが求められる。周辺調査からは、ケアマネージャーの地位と報酬、権限と能力の低さが問題として浮かび上がってきた。 以上の調査から、地域福祉の需要と供給の安定したサイクルを構築するために、市民事業体が果たす役割が大きく、かつその条件を介護保険が提供したことを確認することができた。 865字
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