研究概要 |
平成12年度,13年度の2年にわたる研究調査から、われわれは以下のような新しい社会学的な知見を得ることができた。 (1)アルコール乱用行動の非逸脱視化傾向は、年齢階層的に見た場合、若年層において顕著である。 (2)酒類の製造、販売、広告等に携わる人たちの間では、アルコール乱用行動を非逸脱視する傾向が進行している。 (3)アルコール依存症者が自己イメージを形成するにあたって、家族、職場、地域など身近な人による評価が重要な役割を果たしている。 (4)それに加えて、マスコミ機関によるアルコール依存症者に対するイメージ付与が、かれらのイメージ形成に大きな影響を与えている。 (5)断酒会の活動暦が浅い酒害者ほどマイナスの自己イメージを強く持っている。 (6)酒害者は断酒会活動に参加し、それを学習することによってマイナスの自己イメージを修正していく。 (7)酒害者による自己イメージ修正過程の第1段階は、断酒会の先輩たちの基本的生活習慣を模倣・学習することによって、家族や断酒仲間など身近な人たちからまともな「人間」として認知、受容される段階である。 (8)第2段階は「交通安全運動」など地元の地域活動へ協力・参加することによって、地域の人びとによる一人前の「社会人」としての認知を獲得する過程である。 (9)第3段階は世間のアルコール依存症者に対する偏見やレッテル張りに抗議し、対決する。そしてアルコール問題に関する教育・啓蒙活動を展開する。それらの行動を通して確固とした自己アイデンティティーを確立していく段階である。 (10)これらの過程を通して、断酒会はアルコール依存症者がマイナスの自己イメージを払拭するのに大きな役割を果たしている。
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