本研究は3年間にわたり、人文科学領域から持続的な社会を構築するためにはどうすべきか、また、どうあるべきかを考えることを目的とし、次の5課題に取り組んだ。 1.環境関連施設の整備状況と社会制度の調査 ドイツ、オランダ、スウェーデン、イギリス、中国およびわが国の主な都市の環境施設の状況を調査し、併せて市民の環境への行動を調査した。その結果、ドイツが最も環境への意識が強いことが分った。 2.各国学生の環境意識と行動の調査 上記6か国に加えてアメリカ、トルコおよび韓国の学生についてアンケート調査を行った。調査は1か国、100名以上の学生を対象とした。9か国の学生は先進国、中間国、途上国の全てを含んでいるので、この結果からドイツ、スウェーデンは当然であるが、韓国学生の環境への意識が強いのは以外であった。また、これまで同種の調査で中国は除外されていたが、中国の学生を含めたことは大きな意義があると考える。 3.持続可能な社会構築のために科学技術の進歩は常に環境保全をまず考えて進める必要がある。 4.ヨーロッパのジャーナルから約300編の持続可能な社会論の文献解読を行った。オランダ市民の環境意識と持続可能な社会に関する実態調査と、関連して行政・NGO・大学関係者のインタビューを行った。それに基づいて『オランダ環境報告』を新聞、行政機関誌に掲載した。 5.インドネシア・ロンボック島における持続可能な開発の研究を進め、マタラム大学に同プロジェクトを推進する研究センター設立の準備を行った。 以上の研究結果から環境哲学、環境倫理学の立場から考えることが重要であり、特に佛教の教え「足るを知る」の気持ちを常に持てるように幼児期からのしつけ、教育が持続的社会のために不可欠であることを認識した。
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